このページでは、古民家を移築するための方法や移築のメリット・デメリット、また古民家の移築で注意すべきポイントをまとめました。古民家を移築して新しい場所で活用したいと考えている人は参考にしてください。
移築とは、既存の物件を一度解体して、新しい場所で再建築する方法を指します。単なるリフォームやリノベーション、増改築とは異なり、あくまでも既存の物件をベースとしつつ、新しい場所で現代の物件として再建築するものです。古民家そのものを引っ越しする、ともいえるでしょう。
古民家の移築を行うことで、古民家が持つ風合いを含む古民家ならではの魅力や建材の性質を活かしつつ、希望する土地で新しい物件としてリサイクルできることが特徴です。そのため、古民家の移築は「移築再生」と呼ばれることもあります。
しかし、古民家の移築には相応の技術と経験が必要になることも覚えておきましょう。
古民家の移築には様々なメリット・デメリットがあります。ここでは想定されるメリット・デメリットをまとめました。
古民家移築のメリットは、まず古民家の持つ風合いや魅力、特性などを再利用できる点です。年代を経て深みが増した木材をそのまま建材として再利用できるます。新しい建材やエイジング加工では再現困難な魅力を楽しめることがメリットです。
また、新しい建材の利用を抑えることにより、環境負荷を軽減してサステイナブルな住宅を建築できるという点も見逃せません。加えて、古民家の移築は単に古民家をそのまま移動させるのでなく、あくまでもベースとして既存物件を利用することがポイントです。これにより、外観は古民家なのに住宅設備は最新式といったカスタマイズも可能になっています。
その他、建材を再利用できるためにコスト面でも安価につながる可能性があります。
まず、古民家の移築について適切な技術やノウハウを有している建築会社や工務店、ハウスメーカーなどを見つけなければなりません。古民家の移築は家を建てるだけでなく、適切な手順で解体して、既存の建材や資材を再利用するという点が重要です。つまり、古民家の移築を適切に実行するためには、古材や建材についての知識や取り扱い方についての理解。安全かつ丁寧に既存の古民家を解体して、各建材の利用価値と劣化具合を的確に見極めつつ、正確に家を建築するというノウハウが必要になります。
そのため古民家移築は、任せられる業者が限定されるのがデメリットです。
また、古民家の傷みや建材の劣化が酷い場合、むしろ新しい建材で家を新築するよりコストが高くなってしまう恐れもあるでしょう。
前提として、古民家を移築して同じ規模や特性の物件を現代の建築基準法や生活水準に合わせつつそのままそっくり再現しようとすると、むしろ同規模の一般的な新築住宅を建てるよりもコストは高くなります。
まず、古民家の移築は必ず既存物件の解体、建材の選別と洗浄や再利用のための処理、さらに移築先までの建材の運搬といった工程が発生します。そのため更地に新しい建材をメーカーから持って来て家を建てるより作業的にもコスト的にも規模が拡大してしまうことは必然です。
それに加えて家を建築するための現地調査や図面製作、また直接工事費用などがかかります。
古民家の移築に必要な費用の相場は、家を建てる土地や建材の移動距離、工事の規模、さらに古民家の劣化具合によっても大きく変動します。必ず複数の業者から見積を取った上で相場との比較検討をしてください。
工事費用だけでなく、現地調査費用も発生する古民家の移築。ここでは古民家の移築にかかる費用について紹介します。
基礎工事・断熱工事・内外塗装工事・左官工事などを含む直接工事費。新築同様、移築する場合も基礎から工事をする必要があるため、直接工事費は高くなってしまいます。電気設備や水回りの設備などを整えるため、別途の費用が発生する可能性もあるでしょう。
人件費・重機の運搬費・樹木の撤去費用が解体費用としてかかります。考えられる追加料金は、廃棄物の処理費用と手作業による解体費用です。電化製品や家財道具は自己負担で、依頼主が処分することになります。しかし廃棄物の処理は個人で出せないため、業者に依頼しなければなりません。また道が狭く重機の侵入が困難な場合、人の手による作業が増えることも。家屋以外の構造物の解体が必要な場合にも別途費用が発生する可能性があります。基本の解体費用だけを想定していると、追加の費用が膨大で大幅に予算をオーバーする可能性も出てくるのです。そのため解体費用を算出する場合には、予めどの程度の上乗せが発生するか確認しておきましょう。
古民家の移築と言っても一度は解体するため、新たな図面を作成しなければなりません。設計事務所業者が図面制作をする費用も発生します。図面製作費用も加味したうえで、予算を立てましょう。
つい忘れてしまいそうなのが現地調査費用。別の場所に安全に運搬するためには現地調査が必要です。移築する場所の地盤の固さや周囲に工事の妨げとなる樹木がないかどうかなどを調査します。移築後に地盤が緩いと発覚すると、大きなトラブルに発展します。事前に現地で地盤を調査することでトラブルを防ぐことが大切です。
解体後には移築時に活用する建材の洗浄・運搬もしなければなりません。古民家で使用していた建材は腐食していたり汚れが付着したりしているため、綺麗に洗浄して、使用可・不可なものに選別する必要があります。移築場所まで使用する建材をトラックなどで運搬するため、洗浄・運搬費用が発生するのです。
古民家の移築を検討する上で、一般的には3つの方法が考えられます。
解体移築は文字通り、既存の物件を解体して、必要な建材を回収・リサイクルした上で新しい場所に住宅を建築する方法です。古民家をバラバラにしてトラックで建材を解体できる状態にするため、遠く離れた場所にも古民家を移築できます。
反面、基本の建材は古民家で使われていたものを再利用することになります。丁寧な解体と的確な建材の見極め、さらに古民家の風合いを再現する建築技術など、業者には総合力が求められます。
吊り上げ移築とは、既存の古民家をクレーンで吊り上げて、現在の場所から別の場所へ移動させる建築方法です。
具体的な手順としては、まず古民家の屋根や天井、壁や床といったものを解体して、構造体のみをクレーンで吊り上げ移動するという流れです。そして移動が完了した後、再び壁・床・天井・屋根といった部分を新設します。
当然ながらクレーンで吊り上げて移動させるため長距離移動は困難であり、基本的には敷地内で短い距離を移動させるような場合に利用されるでしょう。
曳家移築も吊り上げ移築と同様に、物件を解体することなく移築を実現する建築スタイルです。吊り上げ移築に対して、曳家移築ではジャッキアップで建物を浮かせて基礎から分離させ、その下にレールをはめ込んで転がしながら移動させるという方法になります。
イメージとしては、古民家の下に車輪を付けて転がして移動させる移築方法であり、古民家の状態を維持したまま移築できることがポイントです。
吊り上げ移築と同様に長距離移動は困難であり、敷地内での移動に採用されます。
古民家の移築を実現するためには条件や注意点があります。そのため、まずはそれらのポイントを把握しておくことが大切です。
移築できる古民家は木造住宅や木造建築物に限られるという点に注意してください。また、木造建築物であったとしても建材の劣化具合や条件によって、古民家の全ての部分を再利用・再現できるとは限りません。
一方、木造住宅であれば移築できる可能性があるため、伝統工法と在来工法のいずれにおいても移築を検討できる点は特徴です。ただし土台の状態によっては移築の費用や作業規模が変動します。
なお、現代の物件は現行の耐震基準に合致していなければならず、古い建物をそのまま利用する場合、耐震基準を満たしていないケースもあります。そのような場合は追加で耐震補強工事が必要です。
経年劣化が進んでいる建材や、傷みがひどい部位については、そのまま移築用の建材として再利用することができません。そのため、古民家を移築するといっても、建築物としての安全性や住居としての快適さを考慮して、適宜新しい建材や資材へ交換されることもポイントです。
なお、新しい建材といっても本当に新品素材を利用する場合から、別の古民家などを解体して得られた建材のリビルド品まで様々なものがあり、ケースバイケースで利用の可否やコストが変わる点にも注意してください。
上述した耐震補強工事の他にも、建材の再塗装や再処理、全体の雰囲気や風合いを整えるための加工といった作業が必要になることも少なくありません。
また移動距離や再利用する建材の規模によっては、新しい建材をメーカーの工場から取り寄せて現場で組み立てる場合より高コストになってしまうことも想定されます。
なお、建材としては再利用できなくても、それを使って家具やインテリアに加工できることもあり、予算やプランに合わせて色々なパターンを検討できるでしょう。
移築すると言っても物件選びから施工会社探し、見積り、契約など様々な手順を踏まなければなりません。ここでは一般的な古民家を移築する流れについて紹介します。
相続で移築する古民家が決まっている場合は問題ありませんが、特に古民家が決まっていないなら物件探しから始める必要があります。空き家バンク・NPOなどが古民家の情報を教えてくれる窓口になるため、どうやって探したらいいか分からない場合は一度相談するといいでしょう。
古民家が決まれば、次に施工会社を探さなければなりません。新築・リフォームを得意としており、古民家移築の経験がほとんどない工務店もあります。そのため古民家移築やリノベーションを得意としている施工会社を探すのが良いでしょう。またできるだけ地域の気候・環境などを把握している、物件のある土地に詳しい施工会社に依頼するのがおすすめです。
施工会社を探すタイミングで、どのような家にしたいか考えてみましょう。マイホームのイメージを固めることによって、どの程度の予算がかかるかを算出しやすくなります。できる限り具体的にイメージすることが大切です。
いくつかの施工会社を探した後は相見積りを取り、適正価格がどの程度かを考えます。安ければいいというわけではなく、提示してくれたプランの内容・サービス・対応力などを総合的に判断して施工会社を選ぶことが重要。費用だけで選んでしまえば、後悔するリスクが高まってしまいます。
施工会社が決まれば、次は移築を具体的にプランニングしていきます。細かな調整・確認を行い、最終的な見積りを提示してもらいましょう。この際追加費用が発生するかどうか、発生するならどの程度か確認してください。
見積り額やサービスに納得できれば契約を結びます。一度契約を交わせばキャンセル料が発生する恐れもあるため、慎重に行いましょう。
問題なければ契約に従って、工事が開始されます。
少しでも費用を抑えたいと考える人がほとんどでしょう。ここでは費用を抑えるためのポイントを紹介します。
解体にかかる費用の半分程度は廃棄物の処理費用とも言われています。つまり建物の中に残置物があれば解体費用も高くなってしまうのです。対策として自分たちで残置物を処分することで、移築費用を抑えられます。残置物を古民家とともに活用するという方法もあるので、使えるもの・使えないものに分別して、使えそうなものは有効に再利用するようにしてください。ただし処分をする場合は地域のごみ回収・粗大ごみ回収のルールに則って廃棄しましょう。
ひとつの業者だけで決めてしまえば、様々なプランを把握できず提示された費用が適切かどうかも判断できません。移築・解体ともに複数の業者から相見積りを取ることが大切です。相見積りを取ることで適正な費用を判断できるだけでなく、業者の対応やサービスの質、プランの提案力など様々なポイントをチェックできます。また迅速な対応・丁寧な説明があるかどうかも、重要なチェックポイントです。費用だけでなく、誠実な対応かどうかも含めて信頼できる業者を選ぶようにしてください。
古民家を移築するのであれば、自治体が行っている補助金制度を利用しましょう。耐震補強に関する補助金や省エネに関する補助金、バリアフリー化に伴う補助金などもあります。ただし自治体によって補助金制度の内容が異なり、なかには制度がないところも。そのため各自治体に確認が必要です。補助金を活用できれば、移築費用の負担軽減につながるでしょう。
古民家の移築は、古民家の風合いや魅力を活かしつつ現代的な住宅をプランニングする上で現実的かつ有効な手段です。しかし、古民家を解体して再建築できる業者が限られていたり、シンプルに新築物件を建てるよりもコストや工期が増大しやすかったりといったデメリットもあります。
そのため古民家の移築を検討する際には、信頼できる業者を見つけた上で、自分なりのこだわりや予算、工期などを細かく専門家に相談していきましょう
5,000本以上の古材を常備(※1)
構造計算・調達・施工まで対応
1,600件以上の古建具を掲載(※2)
掘り出し物の古建具に出会える
70件以上の造作材を通販(※3)
オンラインで手軽に購入できる
調査対象:Google検索「古材 販売」でヒットしたすべてのページ(計13P)のうち、公式サイトで古材を販売している旨を確認できた44社(2022年10月11日時点)
【選定条件】
山翠舎…44社のうち、構造用古材の取り扱いがあり、古材建築の設計・施工まで手掛けている業者の中でストック本数最多(5,000本以上/※1)
※1:参照元:株式会社山翠舎|2023年1月の独自調査で確認できた公式サイトの古材ストック本数(https://www.sansui-sha.co.jp/aboutkoboku)
ひでしな商店…44社の中で、古建具の商品掲載数最多(1,667件/※2)
※2:参照元:ひでしな商店|2022年10月11日時点の独自調査で確認できた公式サイトの古建具掲載数(https://hideshina.com/shop/)
リビルディングセンタージャパン…44社の中で、オンライン販売している造作材(板古材)の点数最多(71件/※3)
※3:参照元:ReBuilding Center JAPANオンラインストア|2022年10月11日時点の独自調査で確認できたオンラインショップの造作材(板古材)掲載数(https://stores.jp/search?q=板古材&store=rebuildingcenterjp)