建築廃材とリサイクル・再利用方法について

解体工事をはじめとする建築現場では多くの廃材が出てしまうでしょう。地球環境保護などの目的で、建築現場から出た廃材を最大限リサイクル・再利用が進められています。このページでは建築廃材とリサイクルについて紹介するので、ぜひチェックしてください。

そもそも廃材とは？

廃材とは住宅・ビルなどの建物を解体するときに発生する産業廃棄物です。木材・コンクリートの塊・レンガ・アスファルト片・プラスチック類・金属・ガラスなど、不要になった様々な素材を言います。

廃材は産業廃棄物に分類される

「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類される廃棄物。一般廃棄物とは一般家庭で排出される廃棄物や、事業所や店舗などから出る産業廃棄物以外の廃棄物のことを言います。産業廃棄物は事業活動に伴って生じる廃棄物のことで、法で定められた6種と政令で定められた14種の計20種類です。建築の解体工事で出る廃材も産業廃棄物に含まれます。

建設リサイクル法で再資源化が義務化に

環境問題に取り組むため、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、いわゆる「建築リサイクル法」が施行されました。建築廃材の有効活用、廃棄物の適正処理を推進することを目的としており、建築の解体によって排出された産業廃棄物の再資源化が義務づけられています。そのため木材・コンクリート・アスファルト・鉄などの建設資材が廃棄物になった場合は、再資源化しなければなりません。

廃材の処理責任は誰にある？

解体工事の元請業者が発生した廃材の処理責任も受け負います。元請業者は建設系廃棄物を自ら処理（収集・運搬・処分）する、または産業廃棄物処理業の許可業者に委託しなければなりません。委託業者が違法焼却や不法投棄など不適切に処理した場合は、適正に契約が結ばれていたとしても元請業者も責任を問われます。そのため委託する場合は、委託業者が廃材を適切に処理したか確認・把握することが重要です。

「建設リサイクル法」で再利用が義務付けられている

建築廃材のリサイクルや再利用については、2000年に「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」において義務化されています。ただし、全ての建築関連企業に義務付けられているのではなく、一定の条件を満たしているケースだけです。

• 建築物の解体工事の場合は床面積80㎡以上
• 建築物の新築、または増築の工事では床面積500㎡以上
• 建築物の修繕・模様替えなどの工事では請負代金が１億円以上
• 建築物以外の工作物の解体工事、または新築工事等では請負代金が500万円以上

上記の基準を満たしている場合には、廃材のリサイクル・再利用を行わなければなりません。つまり基準を満たしていない現場であれば、廃材をリサイクルする必要はありません。しかし地球環境に配慮した取り組みを行うためには、再資源化がカギになってきます。建築業界に携わる企業は環境保全への意識改革、資源の取り扱いが大切になってきているのです。

建築廃材の種類別のリサイクル・再利用方法

建築現場では木くずやコンクリート、プラスチックなど様々な種類の廃材が出されます。ここでは種類別にリサイクル・再利用の方法について見ていきましょう。

木くず類

建築現場で出される廃材の中で、木くずはリサイクル・再利用される代表的な廃材です。状況にもよりますが、木くずの9割ほどがチップ燃料・堆肥。建築資材の原料に用いられています。

• チップ燃料
  細かくして、チップ燃料へ再利用。
• 堆肥
  木くずを粉砕し、牛糞などと混ぜ合わせて発酵させ、農業用の堆肥として活用しています。
• 合板
  解体工事で出された木くずを細かくし、建築用合板やパーティクルボードにリサイクルしています。
• 製紙の原料
  苛性ソーダなどの薬品を木くずにつけ、木材の繊維を除去。木材パルプを製造して製紙の原料にしています。
• バイオエタノール
  薬品処理を施し、木くずからバイオマス燃料を抽出しています。

コンクリート類

解体工事で出されたコンクリート類のほとんどが再生砕石として再利用されています。

• 埋め立ての資材
  道路の埋め立て資材として用いられており、こういったコンクリート類はRCと呼ばれています。近年では再利用資源を活用した公共工事なども増加傾向にあるでしょう。
• レンガ
  細かくしたコンクリートを圧縮することで、レンガとして活用するケースも。外構・エクステリアなどに幅広く活用されています。

プラスチック類

プラスチック類は幅広くリサイクルが行われており、プラスチックの原料・固形燃料などにリサイクルされるケースもあります。

• プラスチック原料
  新しくプラスチック製品を作るための原料として再利用されています。再利用されたプラスチック類は衣類・成形品などの原料となるのです。
• 固形燃料
  プラスチック類・紙くず・木くずと合わせることで、固形燃料を作っています。廃材のプラスチック類を原料とした固形燃料は「RPF」と言い、コストパフォーマンスの優れた燃料として利用可能です。また化石燃料の代替品としての役割もあり、二酸化炭素削減などの効果も期待されています。

サーマルリサイクル（熱利用）

プラスチック類の中にはリサイクルが難しいケースもあり、その場合にはサーマルリサイクルという方法を行います。サーマルリササイクルとは再資源が難しい廃棄物を焼却したときに発生する熱をエネルギーとして活用する方法のことです。ただサーマルリサイクルは日本で生まれたものであって、海外ではリサイクルと考えられていません。

ケミカルリサイクル

廃材であるプラスチック類を化学合成することで、分解する・他の物質へと生まれ変わることで原料として再利用・リサイクルしています。ケミカルリサイクルはプラスチック類を原料にするだけではなく、高炉で還元剤・製鉄所のコークス炉などで再利用するケースも。さらにガス・油に戻したうえで再利用する方法もあります。

様々な再利用を可能としているケミカルリサイクルですが、大型の設備を整える必要がある点や焼却時に発生する有害なガスの処理の点などのデメリットもあります。

石膏ボード類

建築現場で廃材として発生する石膏ボードの多くは、リサイクル・再利用されることなく埋め立て処分されています。しかし石膏ボードを石膏粉・紙片に分類することで、石膏ボードの原料をはじめ土壌改良材へと生まれ変わる場合もあるのです。

• 石膏ボードの原料
  新しい石膏ボードの原料となるケースもあります。
• 土壌改良材
  石膏ボード類から石膏粉を分別し、それを焼成したものを土壌改良材としての固化材・添加剤などにリサイクルされることも。また状況によっては路盤改良材や建設汚泥などの固化材・添加剤として活用されるケースもあります。
• セメントの原料
  石膏粉はセメントの原料としても活用可能です。石膏もセメント同様に水を加えれば固まる特性があり、強度・硬化速度などの違いを上手く活用したリサイクル方法と言えます。

ガラス類

住宅を解体するときには木材などの廃材だけではなく、窓ガラス・鏡などのガラス類も多く発生します。基本的に細かく粉砕し、ガラス原料や舗装材料、骨材などに用いられているでしょう。

• ガラスの原料
  ガラスを種類に分けて細かく砕いたあとに、新しいガラスの原料として生まれ変わります。新しいガラスを作るためには石灰石・けい砂などの天然資源が必要ですが、廃材を再利用することによって資源の節約にもつながるでしょう。
• 舗装材料
  公園・歩道などのカラー舗装としても再利用されています。ガラスを用いることで、色鮮やかな舗装ができると点が特徴です。
• 骨材
  道路のアスファルトの骨材として活用されるケースも。ガラスを再利用することで路面が反射することをはじめとする、ガラスならではのメリットもあります。

鉄くずなどの金属類

鉄くずに関しては以前からリサイクル率が高く、ほとんどの鉄くずが再利用されています。鉄筋・鉄骨などの製品に生まれ変わるだけではありません。鉄くずに含まれる不純物を取り除き高い純度の金属を取り除くといった方法もあります。

古材であれば買取も可能なケースもある

昭和25年以前に建築された木造住宅などに活用されていた資材のことを「古材」と呼びます。近年では外国から安価な木材を入手するケースが多く、国産の木材の使用数は減少傾向にあるのです。しかし戦前の木造住宅の木材のほとんどが国産であり、品質が良いケースがほとんど。そのため昭和25年以前に用いられていた国産の木材である「古材」は徐々に価値が高まっています。

たとえば昭和25年以前に建てられた建物が放置されているケースもあるでしょう。その建物を解体することになれば、古材が多く出る可能性が高くなります。そこで出た良質な古材であれば、売却が可能なものが見つかるかもしれません。そのため廃材として考えるのではなく、価値ある古材として一度査定を依頼してみると良いでしょう。

まとめ

大規模な建築現場から出た廃材はリサイクルが義務化されており、資源の再利用の取り組みが進んでいます。ただし義務化は全ての建築現場ではないため、建築に携わる企業として地球環境への意識改革が大切です。

また戦前に建てられた家屋は、国産の木材を使用しているケースが多く、良質な木材であれば売却ができる可能性もあります。そのため廃材という認識ではなく、古材として売却する方法も踏まえてリサイクル・再利用を検討しましょう。